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 イタリアの大学 に通うとはどういうことだろう。僕にとってはどうだったか? Milano の元大学生が、イタリア の 大学 と laurea (ラウレア、学位取得)について思うことを、徒然なるままに書いてみる。

 2015年4月の終わり、ほぼ同年齢の学生達と共に僕は、ミラノ国立大学の言語・文化学科の建物の中にいた。大講堂の“運命の”入り口の前に立ち、隣にいる友達を落ち着かせることと、自分の修士論文の重要箇所を心の中で繰り返し言ってみることに忙しかった。そしてそれから何時間か後、卒業試験に合格した僕は両親に抱きしめられ、友人の歓声と親戚の賛辞の中、2009年に始まった長い道のりの終点に辿りついたのである。

 2009年の前の1年間 政治学部に在籍していた僕は、完全にルートを変えて
日本語の勉強
をする決心をした。その時の僕が素晴らしい希望と予感に溢れていたにしても、それからの年月を旅行に費やし、世界をさまようことになろうとは思ってもみなかった。2011年の東北大震災の際に東京から逃げて夜の空港で寝たり、日本の大学に通ったりと、イタリアの大学生としての僕の道のりを多くの冒険談が横切っていこうとは…。

 ここに、言っておくべきことがある。イタリアで大学生をやるのは、簡単なことではない。地元生ではない場合にふりかかる問題(最悪の公共交通のストと故障に苦しめられる。真っ当な値段の下宿を探すのは難しく、衛生観念がひどく欠如した人と同室にならないように願うばかり…)を除けた上で言うのだが、イタリアの大学の仕組みには一連の問題がある。元々いわく付きだった深刻な問題が近年エスカレートし、大学の体系自体が総合的に悪化しているのだ。

 私立大学は財政的に豊かであるためハイレベルの教育を維持することができている。学費が、国民の平均生活レベルに比して著しく高いのであるから。だが、政府が研究費予算をどんどん削減していることから、公立大学は危機的状況にある。入学する者は減り、途中で退学していく生徒の数は増加。公立大学の学生の9%が卒業に至らず、これはヨーロッパで見るとフランスの17%についで2位であって、喜ばしくない(2016年欧州委員会のデータ)。

Illustrazione di Nicola Monopoli ispirata a “Le Avventure di Pinocchio” di Enrico Mazzanti (1852-1910)

 そして、世に言う「3年+2年」(学士過程3年とマスター2年)のシステムは、産業界からその価値をあまり認められない「学位保持者」を大量に生産している。産業界は専門的技術を求めるからだ。3年過程のあとも勉強を続けたいなんてことになると、人材市場では「経験も無いまま歳をとり過ぎている」と言われてしまう。

 こういった状況であるから、故国を去る決心をする新卒イタリア人の数が激増している。この言わば「脳みそが逃げる」現象は危機的レベルに至っており、イタリアという国の体系の一つの側面を損ない、結果、国民の自国への信用失墜がますます顕著になってきている。縁故主義、不祥事、機能しない奨学金、時代遅れの遺物である官僚主義。これらは、公立大学の未来に対する良い予兆をほとんど示さない。

 自分たちの仕事をこよなく愛し、そして今も努力し続けている先生方のためでなければ、僕はたぶん上述の9%(退学組)の中に入っていただろう。全てが21歳の時の予測通りにいったわけでもなく、もしも過去に戻ることができるなら、僕が歩んで来た道筋のうちの何らかはきっと変えるだろう。だが、僕を今在る僕に導いてくれた一人の教授(というよりも相談相手の友人といったほうがいい)が言っていたように、「結局我々はみな浪人だ。男も女も、人生という海の中でさまよう波」なのだ。

 この言葉が気に入らない人もいるだろうし、僕の考えに賛成の人もいるだろうが、イタリアで大学に通うといことは、連れ出されてどこで終わるとも知れない旅に出ることなのである。

ヤコポ・アックアティ
Jacopo Acquati
1988年ミラノ生まれ。ミラノ国立大学在学中に日本に留学。2013~2015年、ミラノ大学にて江戸文化と明治初期の日本に関するセミナーを開催。現在はアジア地域のトレードファイナンスに携わっている。

(Ciao!Journal no.15 2018年9-10月号より)

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