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オランダの自転車社会に目を見張る

イタリアの向こう側

 オランダと言われて最初に思い浮かべるものは何だろうか。チューリップ、風車、自転車…。

とりあえずその程度の認識で、僕は去年の8月、半年間の留学生活を始めるべく、人生初めてのオランダに降り立った。オランダと言ってもアムステルダムやユトレヒトのような有名な都市ではない。アイントホーフェンという南部のマイナーな街だ。目ぼしいものと言えば家電の大手フィリップスの本社と、サッカーチームのPSVアイントホーフェンぐらい(後者はサッカーファン情報)。フィリップス社の成長と共に大きくなったこの街だが、昨今は駅前に巨大なキャンパスを構える工科大学のおかげで、大学都市として栄えている。

アイントホーフェン駅前広場

アイントホーフェンのマーケット広場

アイントホーフェン 工科大学

 実は、僕の住むミラノとちょっとした接点が無くもない。アイントホーフェンではミラノと同じく毎年デザインウィークが開催されるうえに、大学の近くにはオルデンバーグの作品もそびえ立っている。オルデンバーグというのは、ミラノのカドルナ駅前の「Ago, filo e nodo」(針、糸、結び目)を作ったアーティストだ。一方ここにあるのは巨大なボウリングボールのストライクの瞬間。勢いよく跳ね上がるボウリングのピンにちなんで「フライング・ピンズ」と命名されている。

オルデンバーグによる『フライング・ピンズ』

僕のシェアハウスの外観

 当初僕がオランダに期待していたチューリップは季節外れなのでお目にかかれず、行った場所が元工業地帯のためオランダ絵画風の風車も無し。しかし残る自転車に関してだけは期待を裏切られずに済んだ。ありとあらゆる色や形のものがそこら中を埋め尽くし、カートやベビーカー付き、タンデム、車椅子にドッキングさせる手漕ぎ自転車に至るまで、なんでもあり。そして、すばらしく整備された自転車道路。道という道が車道、歩道、自転車道路に分かれていて、信号も自転車専用のものがある。そのせいで、十字路ではどこを見ていいかわからず、オランダ初心者は途方に暮れるわけだが。

アイントホーフェン市内の自転車道
(©Lempkesfabriek/Creative Commo)

 だがこのオランダの自転車社会、実は少しくせ者だ。まず、正確には「自転車専用道路」ではなく、むしろ「車と人以外ならなんでも道路」と言った方が正しい。自転車の隣をバイクが走っているのだ。ちゃんとスピード制限はあるのか?そして自転車のニケツが合法。つまり、日本だと女の子をうしろの荷台に乗せて通学するのはただの道路交通法違反だが、こっちでは健全な青春のワンシーンとなり得るわけだ(ちなみにイタリアでも一応違法。皆さん気にしてないかもしれないが)。そしてなんと、スクーターやバイクに乗る際、ヘルメットの着用が義務付けられていない!イタリア人の友人曰く「なんだナポリといっしょじゃねぇか」。いや、それとはまた違うと思うが。自転車道路では電動車椅子も通行する。オランダではこれを目にすることが多く、もしかしたら、これが噂に聞く北欧の福祉社会の一端なのかもしれない、と思った。

 色々と謎も多いオランダの自転車社会だったが、下馬評通り目を見張るものがあったのは確かだ。自分の住むミラノ郊外の町なんて自転車道路はあるにはあるが、どこからともなく始まり、ほんのちょっと行った辺りでいつの間にか消失する。このエコブームの時代、オランダの自転車社会をイタリアも少しは見習うべきではないか。

オランダの双方向自転車道
(©inoue-hiro/Creative Commons)

 余談だが、知り合ったオランダ人の話によると、オランダ人としての市民権を得るには「酔っぱらった状態で自転車を乗りこなせること」「いつでもフリーハンドで乗れること」。これらが必須条件らしい。もちろん僕はどちらもできるようになって帰ってきた。

文・写真 Kei Kobayashi