Starbucks が Milano にやってきた!

 開店前から物議を醸してきた Starbucks 1号店がついに先日、Milanoにオープンした。1971年の米国シアトルでの開業から約45年、今では世界78ヶ国に2万8000店舗以上を構えるスタバだが、満を持してのイタリア初出店となった。

 

 イタリアンバールのエスプレッソこそがコーヒーだ、と信じて疑わないイタリア国民の保守的な考えが、このアメリカ発祥のコーヒーチェーンの進出の前に立ちはだかってきたのは、間違いないだろう。マニュアル化されたメニューではイタリア人が所望する「自分のコーヒー」を提供できないのは明らかである。「エスプレッソだけどマッキャートにして!」「熱々のカップで冷たい牛乳を入れて!」なんてメニューに載せられない。

 だからこそ、イタリア進出のために選ばれたのは従来のスタバ店ではなく、スタバの中でも超高級路線の店「スターバックス・リザーブ・ロースタリー」である。シアトル、上海に続き、ミラノが世界で3軒目。高級感あふれる店内で、厳選されたコーヒー豆「スターバックス・リザーブ」が、その場で焙煎(ばいせん)されて提供される。ちなみに、2018年末には東京中目黒にも隈研吾(くま・けんご)設計の「リザーブ・ロースタリー」が開店される予定だという。

 ミラノ出店に際して選ばれたのは、歴史あるコルドゥージオ広場に面した旧郵便局の素晴らしい建物。2018年9月6日、広場を借り切ってのオープニングセレモニーが行われた。店に入ってまず目につくのは、中央に置かれた巨大な焙煎用の機械だ。まさに「ロースタリー」の名の通り、客の目の前でコーヒーが焙煎される。

 その他、店内はいくつかのエリアに分かれコーヒーのメインカウンターとは別にカクテルバーがあり、コーヒー豆販売エリア、「プリンチ」ベーカリー製品販売エリアなどもある。注目すべきは、ミラノ発のベーカリー「プリンチ」とスターバックスが提携したこと。

 「プリンチ」と言えば「昔ながらの製法と美味しさ」がウリの、近年ミラノっ子に人気のベーカリーだ。1986年の開店から徐々にのし上がり、今やミラノ市内に5店舗を構えるまでになった。両社の提携はミラノ限定ではなく、世界各国「リザーブ・ロースタリー」のベーカリー関連を「プリンチ」が引き受けるらしい純アメリカンなドーナッツやマフィンを求めてやってくる者にとっては期待はずれかもしれないが、保守的なイタリア人客を取り込むには効果的であろう。

 豆選びと焙煎とくるなら、もちろんコーヒーの淹れ方にも ひと工夫がある。エスプレッソに関してはいうまでもないが、新感覚の「ナイトロ・コールドブリューコーヒー」なるものも導入されている。長時間かけて水で抽出したコーヒーに窒素(ナイトロジェン)を加えて、ビールサーバーのようなマシンから提供。生まれてくるのはまろやかでクリーミーな冷たいコーヒーだ。見た目はさながらスタウトビールのようである。注文の際に豆の種類を選ぶことも可能だ。一つ一つのブレンドを熟知したバリスタなりコーヒーソムリエなりが、丁寧に説明してくれる。ミラノ出店に合わせて作られた新しいブレンドもあり、その名を「パンテオン」という。


 

 スターバックス社の会長、ハワード・シュルツ氏曰く、「イタリアのコーヒー文化はスターバックスの原点とも言えるもの」。氏が1983年に初めてイタリアを訪れた時に触れたイタリア特有のコーヒー文化、「バールとそこを行き交う人々」は、スターバックスの構想を膨らませるのに大いに役立ったという。その「原点」における最初の一歩は、趣向を凝らした「スターバックス・リザーブ・ロースタリー」だが、近々従来のスタバも登場することだろう。新しもの好きな学生や若者が多く行きかう街ミラノならば、根強いバール文化との共存も図れるのではないだろうか。

文・Kei Kobayashi
写真・Loveless Photography

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