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Ciao! Journal n.23
1月 16, 2020

日本で繰り広げるコメディア・デラルテ〜大塚ヒロタ氏に突撃インタビュー

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  仮面を使用する即興演劇「コメディア・デラルテ」(Commedia dell’arte)は、16世紀中頃にイタリアで生まれた。「言葉や文化の壁を超えた喜劇」と言われているが、それはなぜなのか。コメディア・デラルテって一体どういうもの?日本でコメディア・デラルテを独自に展開する大塚ヒロタ氏を通して、その秘密に探りを入れてみる。

 コメディア・デラルテの手法を使って日本に笑いの渦を巻き起こしている劇団がある。大塚ヒロタ主宰の「テアトロ コメディア・デラルテ」だ。10月に東京で行われた公演は、7人の登場人物と3人のミュージシャン(ハーモニカ、コントラバス、ドラム)によって、ミニマムな空間で行われた。時に出演者が客席に降りてきたりと、観客に「わあどうしよう!私のところに来るかも」と思わせるようなサイズが、コメディア・デラルテにはちょうどいいのだとか。

 コメディア・デラルテにはお決まりのストックキャラクターがおり、それぞれが伝統的な仮面をつけて役を演じる。今回はその中の3人が登場した(好色な年寄りの商人パンタローネ、その召使いアルレッキーノ、自称将軍のカピターノ)。加えて、大塚氏が独自に生み出したオリジナルキャラクターが4人(カピターノの従者パッカンティーノ、ナルシストな青年ヴァレンティーノ、中国拳法を操るマリアンヌ、パントマイムで演じる気弱な女泥棒ピッツィ)。本格アクション女優によるマリアンヌ姫は息を飲むような演技だった。また、主宰の大塚ヒロタ氏はパンタローネとヴァレンティーノの一人二役をこなしていた。個性炸裂、パワー全開の舞台に満員の観客は大爆笑。と同時に、その他愛のないストーリーがなぜか心にじんわりと温かさを残す。台本、演出とも大塚氏によるものだ。

 公演の後、ご本人にお話を伺った。なお、同氏によれば無声映画で世界中の人を笑わせてきたバスター・キートンやチャップリンが、コメディア・デラルテの要素を持っているという。

コメディア・デラルテとの出会い

 アメリカで役者として活躍できればかっこいいし、どこか人と違う役者になれるのではないかと、若気の至りとでもいうのか単純に考えて、2002年、21歳の時にヒロタはニューヨークに行った。HBスタジオという演劇学校に通い、英語もできるようになってきて現地で小劇場に出たりもした。とはいえ、アメリカで何者かになれると思っていたけど英語は母国語じゃないし、結局は日本語でやっていたことと同じだし…。

 そんな風に気落ちしていたとき、イタリアからやって来たアントニオ・ファーヴァのコメディア・デラルテのひとり芝居を観た。その舞台はほぼイタリア語で行われていたのに、ヒロタは何が起きているのか全部わかって大笑いした。人種も年齢も関係なくみんなが笑っているのを見て、「これができるようになれば世界中の人を笑わせられる。俺がやりたかったのはこれかもしれない」と思った。

 ニューヨークで芝居を観た後、ファーヴァのアメリカツアーについて回った。すると、「そんなに好きならうちでアシスタントでもしながらやればいい」と言われ、2008年、28歳のときにアメリカを切り上げて、レッジョ・エミリア(パルマの隣町)のファーヴァの学校へ。彼のもとで本格的にコメディア・デラルテを学び、自分の芝居にもっとその要素を取り入れたいと思った。1年後イタリアから帰国。

日本で繰り広げるコメディア・デラルテ

 ヒロタがアメリカで最初に観たファーヴァの舞台は「コメディア・ガブリエリアーナ」と呼ばれるひとり芝居だった。ガブリエリアーナはコメディア・デラルテの中では特殊なジャンルで、ファーヴァが1人で色々な仮面を使い、複数のキャラクターを演じ分けていた。

 日本にはその頃、コメディア・デラルテを演る人はほぼヒロタしかいなかったので、ヒロタは必然的にガブリエリアーナをするしかなかった。しかし演っていくうちに次第に観客が増え、コメディア・デラルテをやってみたいという人まで出てきた。そこには役者もいれば、他の職業を持つ人もいた。ワークショップを始めたところ、去年からは集団の公演ができるまでになった。つまりコメディア・デラルテの本来の形に“戻って”きたのだ。

 コメディア・デラルテというのは元々はお客さんからおひねりをもらって成立していたもの。故に、おひねりをもらうためには、絶対に観客を面白がらせなければならない。ヒロタはそういった論理から、日本人が知っているアニメのシーンや映画音楽なども舞台で使うようにしている。つまり、イタリアの伝統的なコメディア・デラルテをそのまま広めるのではなく、コメディア・デラルテのフォーマットやキャラクター設定を使いながら、日本の皆さんに最も楽しんでもらえるものを作りたいのだ。実際、従来の伝統のものではないナルシストのヴァレンティーノ(ヒロタが生み出したキャラクター)が、今やお客さんの一番人気だ。

 カーテンコールで登場人物が仮面を脱いだ時、好色な老人や偉そうな軍人かと思っていた人たちが、皆さわやかなイケメン俳優であることに驚いた。すっかり騙されていたわけだが、これこそが、キャラクターを瞬時に観客に理解させてしまう仮面のパワーなのだと、納得した。

 最後に大塚さんからチャオ読者にひとこと。「この記事を読んで、日本でやっているコメディア・デラルテに興味を持ってくださったら、是非とも一度劇場にいらしてください。来年は大ジャンプの年。大きな公演を打ってみようという心づもりです。」

塚ヒロタ

東京出身。映画(『図書館戦争』シリーズの野村役、12月8日公開『ハチワン結婚相談所』の別所役)、ドラマ、CMなどで活躍中。「テアトロ コメディア・デラルテ」主宰。https://tcd1.com/

文・Akiko Naito
写真・テアトロ コメディア・デラルテ提供
(Ciao!Journal n.22 「ちょっとテアトロ」より)

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