ジュゼッペ・コンテ首相がセックス・シンボルに

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Geienneffe Editore s.a.s.

 3月10日、コンテ首相によって発令された「IO RESTO A CASA」。「私は家にとどまる」と名付けられた首相令だが、これがイタリア国民に究極の試練を与えている。イタリア人のライフスタイルはじめ、個人個人に急激な変化を強いることとなった。だが実は、当のコンテ首相が一番「変化させられている」ようだ。

 コンテの呼びかけによって国民が一致団結し、いま多くの芸能人やインフルエンサーが、コロナウィルス緊急対策支援のために寄付をしている。そしてなんと、Youtubeに次ぐ世界第2位の動画サイト「Pornhub」(ポルノハブ。カナダのポルノ動画サイト)も、3月の収入の数パーセントをイタリアに寄付することを決定。更に、「Pornhubプレミアム」を無料でイタリア人視聴者に提供するとした(もちろん通常は有料!)。イタリア人が大喜びしたのは言うまでもない。

©️ marcoalbieroart

 だがここで、おかしな現象が起きている。イタリアにおけるインターネット検索ランキングで現在1位の「ジュゼッペ・コンテ」が、件(くだん)のポルノハブの中でも検索トップとなっているらしい。当然のことながら、そこにコンテのセクシーなビデオが載っているわけではない。ポルノサイトに首相の演説ビデオが丸々載っているのだ(コンテへの敬意を払うためか…)。時間を持て余した「引きこもりイタリア人」達は、わざわざコンテのビデオをポルノサイトにまで出向いて検索するんだそうだ。全くもって、イタリア人は変な人たちである。
 他にも「引きこもりイタリア人」のストレス発散となっているのが、ネット上でコンテ首相をイジってセクシーな画像に仕上げることだ。この緊迫した時期にコンテの顔を見るとほっこりするから、というのが理由らしい。
 

 というわけで、現在、コンテの「セックス・シンボル」としてのイメージが定着しつつあります。ではなぜ、「コンテの顔を見るとほっこりする」のでしょうか?以下に、Olga L.氏によって書かれた記事「Giuseppe Conte|Da premier a sex symbol: perchè ci ha conquistate?」を日本語にして掲載します。これを読むと、その理由がわかりますよ!

(翻訳はチャオジャーナルによるものです)

ジュゼッペ・コンテ首相が「セックス・シンボル」に。その理由を探ってみる。

 コンテ首相は果たして、イタリア女性が理想とする「男」なのか。ウェブ上の女性陣の反応によると、どうやらそのようだ。「Bimbe di Giuseppe Conte」「Daddy Conte」等といった、ファンによる様々なSNSアカウントが存在するが、もともと弁護士であった男が、どのようにして「抱かれたい男No.1」というポジションにまでのし上がったのか、探ってみよう。

 ©️ lebimbedigiuseppeconte

 コンテが首相に任命されたのは2018年6月1日のことであり、それまで政界では無名だった。大学教授(法学部)が、いきなり「イタリア国民の弁護士」と呼ばれるようになったのだ(コンテは弁護士でもある)。
 右派(「五つ星運動」と「北部同盟」からなる「Governo gialloverde」黄緑政権)と左派(「五つ星運動」と「民主党」から仕方なく生まれた「Governo giallorosso 黄赤政権」)が争う中で、辞任せずに踏ん張った首相である。彼が首相に就任してからの2年間、イタリア政界の混乱が収まることはなかったが、彼は最後には「政界の継続と責任感の象徴」となることができた。
 だがその彼がいま、あろうことか、「イタリアのセックス・シンボル」になっているのだ。イタリア人女性のこのおかしな情熱(年齢問わず)は何処からくるのか?この現象をどう説明すれば良いのだろうか。

ジュゼッペ・コンテこそ、イタリア人女性が求めていたセックス・シンボル

 イタリア共和国史上、一政治家に対するこのようなパッションは前代未聞だ。数週間前からネットは、コロナ対策に尽力する現首相に捧げたコミュやコメント、リアクション、インターネット・ミームで溢れている。そしてその中で、女性ファンによる「愛の告白」や首相の体格を「ベタ褒めする」メッセージが、群を抜いて多いのだ。

 ©️ Ciao Journal

 どうやら、イタリアが一大危機の最中(さなか)にあるいま、イタリア国民のリーダーとしての理想像と人間としての理想像が二つとも、コンテ首相の姿に重なったようだ。

 さてその理想像とは?準備はいいですか?リストは長いですよ。

優しいリーダー

 コンテ首相の特徴といえば、落ち着いた性格だろう。暴言を吐いたり取り乱した姿を見せたことは、未だ一度もない。同盟政党や政敵の攻撃にはエレガントに答え、記者に対しても決して雑な答え方をしない。
 現首相は、ちょっと前までイタリアを代表していた「強引なコミュニケーション能力」が特徴のサルビーニとの間にはっきりとした境界線を引き、はっきりした違いを見せつけているようだ。
 コンテ首相の演説や文章は国民にとても受け入れられやすい。それに加えて、コンテのゴーストライター、つまりSNSコミュニケーションチームの力もすごい。首相のオフィシャルアカウントにおいて投稿されるメッセージはどれも明確で、かつ慎重なものであり、首相の演説と同じ様に、国民に安心感、信頼感を与えるような文章に仕上げられている。とにかく、サルビーニのプロパガンダとはえらい違いだ。
 イタリア中の女性は、現首相の、演説の度に見え隠れする優しさと安心感に、どうしようもなく魅了されていく。「男は男性的でなければならない」という絶対的男性像の時代は終わったのだ。

働く男

 ここ最近、コンテ首相は休むことなく、国の危機のために働いている。政治家とは、「自分の義務に反している」「無関心である」「自分の特権を利用している」等と責められることが多いものだが、コンテがこういった理由で責められたことは一度もない。「信頼できて、勤勉で、疲労を見せない男」。それがイタリア女性の理想の男だったのか。そうなのか!

物知りな男。文化人の魅力

 彼の就任初期から多くのイタリア人は、今までのリーダー達の不格好な姿とは裏腹に、コンテ首相の「ヨーロッパの様々なリーダーたちと流暢な英語で話している姿」に喜びを覚えていた。また、しばらく経ってから、それはそれはエレガントに、「首相になる前は大学教授であった」ことをテレビ越しにアピールしたときの清々しさも、コンテならではのものであった。「理想の男=セクシーが取り柄の男」のブームはすっかり去ったようで、イタリア中の女性は今や、コンテの知的なスマートさに惚れ込んでいる。時は移り変わるのだ(幸い良い意味で)。

ダディー・コンテ、やりすぎ?

 SNSで一度ヒットしたものが悪ふざけの対象に変化していくのは仕方のないことなのか、今やコンテ首相の「恥ずかしい愛称」が飛び交っている。一番人気なのが「ダディー」(パパ)であり。ベルルスコーニが若いガールフレンド達に「パピ」と呼ばれていたのと同じノリだ。

 ©️ daddy.conte

 「ダディー」とは「シュガー・ダディー」に由来しており、親切で愛情深く、いつでも助けてくれる(経済的にも)、自分のパパぐらい年上のパートナーを指す。つまり、父親と人生のパートナーが融合した存在、厳しいが甘やかしてくれる男性が、イタリア女性の理想像となったのだ。

新しい男性像

 さて、これまで女性の反応について述べたが、男性陣もコンテを「新しい男性像として見ている」ということを忘れてはならない。

 ©️ paglicifrancesco

 例えば、コンテ首相が様々なヒーローの格好をしている写真がたくさん出回っている。そのヒーロー達との共通点は、(攻撃をせずに)国を守る、丁重、慎重、カリスマ性があるという所である。
 とはいえ、イタリア男達は、コンテ首相がセックスシンボルにまでなってしまった事には、さぞかし驚いていることだろう。そして、そこから何を学ぶのだろうか。「イタリア人女性が変わった」ということであろうか。それとも、「フラれないためには流行に乗らないといけない」ということであろうか。

©️ lebimbedigiuseppeconte

 3月19日は聖ヨゼフの日、つまりイタリアでは「父の日」だった。もちろんウェブ上では「San Giuseppi da Palazzo Chigi」(キージ宮の聖ジュゼッピ。Palazzo Chigiは首相官邸)という、新聖人ジュゼッピ(ジュゼッペではない)が祭られた。
 だが悪ふざけもこの辺にしておいた方が良いのでは?

Olga L.氏によって書かれた記事「Giuseppe Conte|Da premier a sex symbol: perchè ci ha conquistate?」をCiao! Journal が日本語に翻訳したものです。

Natsu Funabashi ©️ Ciao Journal