ポタッポタッポタッ…。ずぶ濡れの真っ白な布から液体が滴り落ちる。そしてそのまま静止してしまった…。

Makotoは時を固める彫刻家だ。その作品が白を基調とすることから、彼は「Codice Bianco」(コーディチェ・ビアンコ=ホワイト・コード)というニックネームで知られている。
Makotoはダ・ヴィンチに出会い、芸術に目覚めた。幼い頃、『モナ・リザ』が上野の国立博物館にやって来た時の事だ。「モナ・リザ展」をニュースで見て興味を持った少年は、母親に連れられて初めて東京へ行った。東京国立博物館の「モナ・リザ展」と同時に、国立科学博物館では「科学者レオナルド・ダ・ヴィンチ展」が開催されていた。「彼は絵描きであるだけでなく発明家でもあったのか」。少年は衝撃を受けた。
「モナ・リザ展」は凄い人混みだった。小さなMakoto少年も、人の隙間から絵を見ようとしていた。そして人垣がなくなったとき突然目の前に現れた『モナ・リザ』。その瞬間、周りからすべての人が消え、絵の前で身動きができなくなった一人の少年の姿があるのみだった。

その10数年後、Makotoはレオナルドを追ってヨーロッパへと渡った。発明家ダ・ヴィンチは近代的なミラノに魅了され、この町に長く住んだ。当初無名だったダ・ヴィンチに向けるミラノ人の目は冷たいものであったという。だが天才は人々を跪(ひざまず)かせ、ナビリオ運河の設計を任されるまでになる。

Makotoは、ミラノに様々に潜む「ダ・ヴィンチの跡」を探しながら、町を歩いている。そして2019年6月、天才の没後500周年を迎えて彼が企画した展覧会は、「Il Genio del Rinascimento abita la nostra anima」(私たちの心の中に住むルネサンスの天才)だ。同じくミラノ在住の画家、Kazuto Takegamiとの二人展であった。

皆さんは、ダ・ヴィンチが音楽家でもあったことをご存知だろうか。楽器を制作し、作曲をし、歌も歌った。今回の展覧会では、彼が生きた時代の曲を奏でる演奏会も行われた。古楽器のリュートの伴奏で、メゾソプラノがダ・ヴィンチ作曲の歌を聴かせてくれた。

これは当時の主流で人気の音楽形式、つまり「ポップス」なのだとか。どうりでどの歌詞も恋愛を語ったりと、確かに一般市民に伝わりやすいものばかりである。
MakotoとKazuto Takegamiの作品に見守られ、リュートとルネッサンスの音色に包まれた空間で、私たちは不思議な感覚を味わっていた。
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「Il Genio del Rinascimento abita la nostra anima」(dal 12 al 23 giugno 2019)
ミラノ在住日本人アーティストによる二人展
彫刻家 : Makoto
画家 : Kazuto Takegami
主催 : Fondazione Paolina Brugnatelli
「La musica di Leonardo, ispirazione al genio」(19 giugno 2019)
レオナルドが生きた時代のポップ・ミュージック・コンサート
メゾソプラノ歌手 : Valentina Volpe Andreazza
リュート奏者 : Maurizio Piantelli
企画: Makoto
主催・スポンサー : Fondazione Paolina Brugnatelli
音楽家コーディネート: Paolo Cacciato